永瀬清子生家にて 2023.2.19
吉岡幸一
庭先に赤い梅の花が咲くころ
永瀬清子の生家に詩人たちが集まり
現代詩賞の表彰式を待っている
華やかさよりは穏やかさを持ち
賑やかさよりは静けさを感じさせ
詩人たちは生まれた詩を
大切に抱いて連れてきている
予期せず作品の朗読中に
声を詰まらせた受賞者に
頷きながら白髪をふるわせる人
目頭を擦り 涙をぬぐう人
ただじっと天井の板を見つめる人
熱く暖かなまなざしを向ける人
詩と詩の空白に詩が生まれる
はじまりは雨の匂いがしていても
おわりは陽の香りが満ちている
詩作の悩みを語りあい 励ましあい
上辺ではなく理解しあえるのは
同じ悩みを持つ者同士だからだろう
永瀬清子のもとに集まる詩人たちから
文字になる前の詩が生まれる
気づかないほどささやかに咲いている
梅の花はそれ自身でうつくしい
誰にも認められないとしても
生まれようとする詩はそれだけで素晴らしい
朽ちかけた生家が甦ったように
生み落とせない詩もいつかは生まれる
いつか芽吹き いつか花は咲く
いつか誰かが気づいてくれる
上の作品は第六回永瀬清子現代詩賞の受賞者 吉岡幸一さんから、昨年保存会へ届いた詩です。
永瀬清子の詩が生まれた現場(清子の家)で、表彰式は行います。
金屏風はありませんが、ガラス障子の向うは紅梅。
当日は受賞の方だけでなく、コンクールに応募した人、岡山県詩人協会の方々など詩を書く仲間が集まりました。
あなたも、日々の生活の中にあふれる思いを「詩」のかたちにしてみませんか?
そして来年2月、仲間たちと語り合ってみませんか?
5月17日消印有効。ご応募お待ちしています!